「父が亡くなったあと、口座からお金を引き出して葬儀代に使った」
「相続の話し合い前に、親の通帳から生活費を使ったことがある」
こうしたケース、意外と多くの人が経験しています。
でも、その行為、相続手続き上でトラブルになる可能性があるんです。
今回は、「遺産を一部使ってしまった」場合に考えられる問題点や対応方法について、わかりやすく解説します。
相続が始まる「時点」から全てが遺産に

亡くなった直後の通帳にあるお金って、もう自由に使っちゃダメなの?

亡くなった時点でその方の財産は「相続財産」となり、勝手に使うとトラブルのもとになります。
人が亡くなった瞬間、その人の財産(現金・預金・不動産など)はすべて相続財産として相続人全員の共有物になります。
したがって、誰か1人が勝手に使うことは法律上認められていません。
やむを得ず使った場合は「精算」が必要

でもさ、葬儀代とか誰かが立て替えなきゃ回らないよね?

その通りです。ただし、あとで他の相続人と共有して「精算」する必要があります。
たとえば以下のような支出は、合理的な範囲で認められることがあります:
- 葬儀費用
- 初七日法要の費用
- 緊急的な医療費・施設費用
ただし、支払った内容と金額を領収書やメモなどで記録しておき、遺産分割協議で他の相続人と精算することが重要です。
故意や隠ぺいの場合は「持ち戻し」の対象に

隠れて遺産を使い込んだ場合は「特別受益」や「不当利得」として持ち戻しを求められることがあります。
正当な理由もなく、自分の取り分以上に遺産を使ってしまった場合は、相続の場面で問題になります。
特に以下のような場合は注意が必要です:
- 口座から頻繁に現金を引き出していた
- 使った事実を他の相続人に伝えていない
- 使途不明な支出が多い
このような行為は「遺産の使い込み」としてトラブルになり、持ち戻し(加算)して再計算を求められることになります。
相続放棄していると返還義務が?

えっ、相続放棄してても、使った分は返さなきゃいけないの?

相続放棄をしていても、遺産を勝手に使えば「相続人とみなされる」可能性があります。
相続放棄をした人でも、相続財産を処分した場合は「単純承認」とされてしまうことがあります。
つまり、放棄が無効となり、借金を含めた全財産を相続したことになる可能性があるため、非常にリスクが高いです。
まとめ:使ってしまったら、まずは正直に相談を
- 相続開始後の財産は、相続人全員の共有財産
- 勝手に使えばトラブルや持ち戻しの原因に
- やむを得ない支出も「精算」と「記録」が重要
- 相続放棄後の使用には要注意
「うっかり使ってしまった」「悪気はなかった」
そんなときでも、早めに正直に話すことが、争いを防ぐ第一歩です。
相続財産の取り扱いに不安がある方は、ぜひ私たち専門家へ相談を。