「長男が家を継ぐから、財産も全部相続するのが当然」
そんな声、今でもよく聞きます。でもそれ、本当に法律に沿った話でしょうか?
今回は、現代の相続制度の基本を押さえつつ、「長男が全てを相続する」は正しいのかをわかりやすく解説します。
昔の“家督相続”の名残が今も影響?

うちの田舎では、長男が全部相続するって昔からの決まりだったんだけど…

昔の「家督相続」は戦前の制度です。今の法律では、長男だけが優遇されることはありません。
戦前の「家制度」では、長男が家と財産をすべて継ぐ家督相続が一般的でした。
しかし、この制度は戦後の民法改正で廃止されています。現在の相続制度は、すべての子が平等に相続する仕組みです。
現代の法定相続分ではどうなる?

じゃあ今の法律では、兄弟はみんな同じだけ相続するってこと?

はい、兄弟姉妹は法定相続人として平等です。たとえば配偶者と子2人なら、配偶者が1/2、子どもたちが1/4ずつになります。
民法では、相続人とその分け前(法定相続分)が決められています。たとえば:
- 配偶者と子2人 → 配偶者1/2、子2人が1/4ずつ
- 子ども3人のみ → 3人が1/3ずつ
長男だから多くもらえる、という法律上のルールは存在しません。
遺言があれば違う分け方も可能

遺言書があれば、法定相続分と異なる分け方も可能です。ただし「遺留分」に注意が必要です。
たとえば「長男にすべてを相続させる」という遺言書があれば、その通りに分けることもできます。
しかし、他の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められており、遺留分侵害額請求という権利を使って取り戻すことも可能です。
話し合いで長男に譲ることはできる?

他の兄弟が納得すれば、長男に全部渡してもいいの?

もちろん可能です! 相続人全員の合意があれば、どんな分け方も自由です。
遺産分割協議では、相続人全員が納得すれば、どんな割合でも構いません。
長男が家業を継ぐ、親と同居してきたなどの事情があれば、他の兄弟が譲歩することもよくあります。
まとめ
- 現代の法律では、長男だけが相続する制度はない
- 子どもたちは法定相続分で「平等」が基本
- 遺言や話し合いによって、長男が多くもらうことも可能
- 感情や公平感にも配慮した手続きが大切
「長男がすべてを相続する」は、昔の常識。
今は法に基づいた平等な相続が基本です。
ただし、家族の思いや暮らしの実態を考えた柔軟な分け方も可能です。
相続での不安や疑問があれば、ぜひ私たち専門家へ相談を。