相続人の一人が長年音信不通、あるいは海外で行方が分からないというケースは意外と多くあります。
こうした「行方不明の相続人」がいる場合、相続手続きはどうなるのでしょうか?
今回は、所在不明の相続人がいる場合の法的対応と、実務上のポイントを解説します。
行方不明でも相続人のまま?

兄貴はもう10年も連絡が取れないけど、それでも相続人になるの?

はい、たとえ行方不明でも、生存が確認できない限り相続人のままです。
民法では、相続人の「所在」がわからないだけでは、相続権を失うことはありません。ですので、他の相続人だけで遺産分割協議をすることはできません。
不在者財産管理人の選任を申し立てる

じゃあどうすれば手続きを進められるの?

家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることで、手続きを進めることができます。
不在者財産管理人とは、所在不明者の代わりに法的手続きを行うための代理人です。
申立ては、家庭裁判所に対して行い、必要な戸籍・住民票・不在の事実に関する証拠などを提出します。
管理人選任後の流れと注意点

不在者財産管理人が選任されても、遺産分割協議の内容に裁判所の許可が必要になります。慎重に進めましょう。
不在者財産管理人が選任されると、その人が行方不明者の代理として遺産分割協議に参加できます。
ただし、協議内容を実行するには「家庭裁判所の許可」が必要です。時間と手間がかかる点に注意しましょう。
失踪宣告という手段もある

もっと早くスムーズに進める方法はないの?

行方不明になって7年以上経っていれば、「失踪宣告」を申立てる方法もありますよ。
失踪宣告とは、長期間行方不明の人を法律上「死亡した」とみなす制度です。7年以上不在であれば家庭裁判所に申立てが可能です(災害など特別な場合は1年)。
失踪宣告が認められれば、その人は死亡したものとされ、他の相続人で手続きを進められるようになります。
まとめ
- 行方不明でも相続人の資格は失われない
- 不在者財産管理人を選任すれば手続きが可能
- 家庭裁判所の許可が必要になる
- 失踪宣告により死亡扱いとする方法もある
相続人の所在不明は、遺産分割を大きく遅らせる原因になります。スムーズな解決には、法的制度を正しく活用することが大切です。
こうしたケースでは、私たち専門家へ相談を。